営業主任 松本

いつもブログをご覧頂き有難うございます。
2025年に開催された 大阪・関西万博 は、世界中から多くの来場者を迎え、大きな役割を果たして閉幕を迎えました。
万博開催期間中は、経済効果や来場者数、パビリオンの話題が数多く取り上げられてきましたが、閉幕した今、改めて注目されているのが、「万博会場跡地は今後どうなるのか」という問題でございます。

わたくしは不動産実務に携わる立場として、大規模開発用地や公共性の高い土地の扱いについて、日々多くのご相談を承っております。その経験から申し上げますと、万博跡地は単なる再開発用地ではなく、大阪という都市の将来を左右する極めて重要な土地でございます。

本記事では、万博が閉幕した「今」という時点に焦点を当て、

  • なぜ跡地問題がこれほど注目されているのか
  • 夢洲という土地が持つ特性
  • 不動産・街づくりの視点から見た本質的な課題

これらを軸に、断定や憶測を避けつつ、専門的かつ分かりやすく解説してまいります。

目次

万博閉幕後、最初に問われる「跡地」という課題

万博は「終わってから」が本番と言われる理由

万博のような国際的な大規模イベントは、開催中よりも閉幕後の扱いこそが重要であると言われております。
なぜなら、会場として整備された広大な土地やインフラは、閉幕と同時に「使い道を失った状態」になるからでございます。

開催期間中は明確な目的と利用者が存在していた会場も、閉幕後には、

  • 誰が
  • 何のために
  • どのように使うのか

という点が、改めて問われることになります。
この切り替えがうまく進まなければ、跡地は一時的に価値を失った土地となってしまう恐れもございます。


「今の跡地問題」が注目される背景

今回の万博跡地問題が特に注目されている理由として、次の点が挙げられます。

  • 会場規模が極めて大きいこと
  • 大阪湾に位置する人工島「夢洲」という特殊な立地
  • 国・大阪府・大阪市が深く関わる公共性の高さ
  • 将来のIR(統合型リゾート)構想とも関係がある点

これらが複雑に絡み合い、単純な再利用では済まされない状況となっております。


夢洲という土地が持つ特殊性

人工島であることの意味

万博会場となった夢洲は、大阪湾に造成された人工島でございます。
この点は、不動産や街づくりを考える上で非常に重要な要素でございます。

人工島であるがゆえに、

  • 利用目的が明確でなければ人の流れが生まれにくい
  • インフラ維持に継続的な費用がかかる
  • 周辺地域との一体的な活用が求められる

といった特徴がございます。
一般的な市街地とは全く異なる視点で考える必要がある土地なのでございます。


万博会場として整備されたインフラ

万博開催にあたり、夢洲では道路、交通アクセス、各種インフラが集中的に整備されました。
これは跡地活用において大きな強みとなる一方で、維持管理という新たな課題も同時に生じております。

閉幕後に十分な利用がなされなければ、

  • 維持費だけがかかる
  • 活用されない施設が残る

といった事態にもなりかねません。
この点が、万博跡地問題をより難しくしている要因の一つでございます。


不動産の視点から見た「閉幕後の万博跡地」

一般的な再開発用地との決定的な違い

不動産実務の立場から申し上げますと、万博跡地は通常の再開発用地とは性格が大きく異なります。

  • 用地規模があまりにも大きい
  • 利用の前提として公共性が求められる
  • 初期投資額が莫大になる
  • 単独事業者での活用が難しい

これらの条件を満たす土地は、日本国内でも極めて稀でございます。
そのため、「売却して終わり」「一施設を建てて完結」といった考え方は現実的ではございません。


「何を建てるか」より重要な視点

万博跡地の話題では、「次は何ができるのか」という点が注目されがちでございます。
しかし、専門的な立場から見れば、重要なのは、

  • 夢洲にどのような役割を持たせるのか
  • 大阪全体の中でどの位置づけとするのか
  • 継続的に人が集まり、使われ続ける形か

という点でございます。
建物の種類よりも、土地の役割をどう定めるかが最も重要な論点なのでございます。

いま見えてきた跡地活用の方向性と現実的な論点


万博跡地活用は「すでに始まっている」と言えるのか

万博が閉幕した今、「跡地はこれから考えられるのではないか」と感じておられる方も少なくございません。しかし、不動産や行政の視点から申し上げますと、万博跡地の扱いは、閉幕前から継続して検討されてきたテーマでございます。

なぜなら、万博会場の整備は一時的なイベントのためだけに行われたものではなく、その後の利用を見据えた前提のもとで、道路や交通、インフラの整備が進められてきたからでございます。
閉幕した今は、その考え方が「具体的な形」を問われる段階に入ったと捉えるのが適切でございます。


万博跡地で想定されている主な活用の方向性

国際都市・大阪の拠点としての位置づけ

万博跡地について語られる際、必ず出てくる視点が、国際都市としての大阪の拠点機能でございます。
夢洲は大阪湾に位置し、海・空・陸のアクセスを組み合わせやすい立地であることから、将来的に国際的な交流や受け入れの場として活用する考え方がございます。

この場合、単なる観光施設ではなく、

  • 国際的な展示・交流機能
  • 研究・技術・産業の発信拠点
  • 海外との接点となる都市機能

といった役割が想定されることになります。


統合型リゾート(IR)構想との関係

万博跡地を語るうえで避けて通れないのが、IR構想との関係でございます。
夢洲は、以前からIR候補地として名前が挙がっており、万博終了後の活用についても、この構想と無関係ではございません。

ただし、ここで重要なのは、
万博跡地すべてがIRになるわけではない
という点でございます。

IR構想が関係するのは、あくまで夢洲全体の中の一部エリアであり、万博跡地全体の使い方は、より広い視点で整理される必要がございます。


公共性を重視した都市機能の導入

もう一つの重要な方向性が、公共性の高い都市機能の導入でございます。
万博という国際的イベントの後であるからこそ、

  • 災害時の拠点機能
  • 防災・減災を意識した施設
  • 広域的に利用できる公共空間

といった役割を担わせる考え方も現実的でございます。

特に夢洲は、人工島という性格上、防災や安全面への配慮が欠かせないエリアであり、この点は跡地活用を考えるうえで極めて重要な論点でございます。


なぜ跡地活用は一気に進まないのか

規模の大きさがもたらす慎重さ

万博跡地が抱える最大の特徴は、その圧倒的な規模でございます。
一部の土地であれば比較的短期間で方向性を定めることも可能ですが、夢洲のように広大なエリアでは、

  • 一度決めた内容を簡単に変えられない
  • 周辺への影響が非常に大きい
  • 投資額や維持費が巨額になる

といった事情がございます。
そのため、拙速な判断は避けられ、慎重な整理が求められるのでございます。


公共性と経済性の両立という難題

跡地活用において常に問われるのが、公共性と経済性のバランスでございます。
公共性を重視しすぎれば収益性が確保しづらくなり、経済性を優先すれば周辺住民や社会的理解が得られにくくなります。

万博跡地は、

  • 国費や公費が投入された土地
  • 国際的な注目を集めた場所

であるがゆえに、このバランスが特に厳しく問われる土地でございます。


不動産の専門的視点から見た現実的な課題

維持管理という「見えにくい問題」

万博会場として整備された施設やインフラは、閉幕後も維持管理が必要でございます。
しかし、十分な利用がなされなければ、

  • 維持費だけが発生する
  • 活用されない空間が増える

といった問題が生じかねません。
不動産の世界では、このような状態を「負動産化」と表現することもございますが、万博跡地ではそのリスクを慎重に避ける必要がございます。


段階的な活用という現実的な考え方

夢洲全体を一度に完成させるという考え方は、現実的ではございません。
そのため、

  • まず一部エリアから利用を始める
  • 状況を見ながら次の使い方を考える
  • 柔軟に内容を調整していく

といった形での活用が、現実的な選択肢として検討されることになります。
これは消極的な判断ではなく、巨大な土地だからこそ必要な考え方でございます。


周辺地域・不動産市場への影響

すぐに価格が動くわけではない

万博跡地の話題が出ると、「周辺の地価は上がるのか」という質問をよくいただきます。
しかし、不動産実務の立場から申し上げますと、跡地活用が発表されたからといって、即座に価格が大きく変動することは多くございません

実際には、

  • 実際にどのように使われるのか
  • 人の流れが生まれるのか
  • 利便性が向上するのか

といった点が、時間をかけて評価されていくことになります。


長期的に見た影響の考え方

万博跡地の影響は、短期的な価格変動ではなく、
大阪湾岸エリア全体の価値形成という形で現れてくる可能性がございます。
その意味で、万博跡地は「今すぐの不動産取引」よりも、「将来の都市像」に関わるテーマであると言えるでしょう。

万博跡地をどう見守るべきか ― 大阪の未来に求められる視点 ―


万博跡地問題は「答えを急がない」ことが重要

万博が閉幕した今、多くの方が
「結局、万博跡地はどうなるのか」
「いつ何が決まるのか」
という点に関心を寄せておられます。

しかし、不動産と街づくりの専門的な立場から申し上げますと、万博跡地については答えを急がない姿勢そのものが重要でございます。
なぜなら、この土地は短期間の判断で方向性を定めてしまうには、あまりにも影響範囲が大きいからでございます。

万博跡地は、

  • 大阪という都市の信頼
  • 国際的な評価
  • 将来世代への責任

これらすべてを背負う土地であり、「早く決めること」よりも「誤らないこと」が優先されるべき存在でございます。


「使われ続ける跡地」であるために必要な条件

一時的な話題性に頼らない

過去の大型開発を振り返りますと、完成当初は話題性が高く注目を集めたものの、数年後には利用が低迷した事例も少なくございません。
万博跡地において、同じ轍を踏まないためには、
一時的な集客力や話題性に依存しない考え方が不可欠でございます。

重要なのは、

  • 日常的に利用される理由があるか
  • 継続的な役割を持たせられるか
  • 時代が変わっても価値を保てるか

という視点でございます。


利用され続けるための「役割」の明確化

万博跡地は、
「何が建つか」
ではなく、
「何のために存在する場所なのか」
を明確にすることが何より重要でございます。

たとえば、

  • 国際交流の場
  • 防災・減災の拠点
  • 新産業や技術の受け皿
  • 大阪湾岸エリアのハブ機能

こうした役割が整理された上で初めて、建物や施設の内容が意味を持ってまいります。


大阪という都市にとっての万博跡地の意味

都市の「余白」をどう扱うか

不動産の世界では、すべての土地を最大限に使い切ることが正解とは限りません。
特に都市規模が大きくなるほど、

  • あえて詰め込まない
  • 余白を残す
  • 将来の選択肢を確保する

といった考え方が、結果として街の価値を高める場合もございます。

万博跡地は、大阪にとって数少ない**「将来に向けた余白」**とも言える存在であり、この点をどう扱うかが、都市としての成熟度を問う指標になると考えられます。


万博跡地は大阪の「姿勢」を映す

万博跡地がどのように扱われるかは、
大阪が何を大切にする都市なのか
を内外に示すメッセージとなります。

短期的な利益を優先するのか、
長期的な価値を選ぶのか、
公共性と経済性をどう折り合わせるのか。

これらの選択は、今後の大阪の評価や信頼にも直結してまいります。


不動産の専門家として感じる「本当の論点」

不動産は「建てること」が目的ではない

日々、不動産の現場に携わっておりますと、
「何かを建てなければならない」
「使っていない土地は無駄だ」
という声を耳にすることがございます。

しかし、本来不動産とは、
人の暮らしや社会の仕組みを支えるための器でございます。
万博跡地もまた、同じ考え方で捉える必要がございます。


失敗しないために必要な「柔軟性」

万博跡地のような大規模用地では、
最初に決めた内容を将来にわたって固定してしまうことが、かえってリスクになる場合もございます。

  • 社会情勢の変化
  • 技術の進歩
  • 人口動態の変化

こうした要素に対応できる余地を残すことが、結果として成功につながることも多いのでございます。


私たち市民・不動産所有者ができること

過度な期待や不安に流されない

万博跡地の話題は、どうしても
「すごい施設ができるのではないか」
「治安や環境が悪化するのではないか」
といった極端な見方に傾きがちでございます。

しかし、実際には、慎重な検討と段階的な整理が行われていくのが現実でございます。
だからこそ、冷静に情報を受け取り、過度な期待や不安に流されない姿勢が大切でございます。


街の変化を長い目で見る

万博跡地の影響は、
明日、来月、来年といった短い時間軸では測れません。
むしろ、
5年後
10年後
20年後

といった長い視点で見たときに、初めて評価できるものとなります。

不動産に関わる判断をされる場合も、こうした時間軸を意識されることをおすすめいたします。


担当/松本 良教


役職:営業主任

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